頭部外傷
頭部外傷とは
頭部外傷の原因としては、転んでしまったり、交通事故に遭い、頭を強く打ったことで起こります。軽い頭部外傷では治療の必要はありませんが、頭痛や吐き気などの症状がある場合は、必ず病院での診察が必要です。
外傷性くも膜下出血
外傷により、くも膜下に出血が起こることで生じます。
頭部の衝撃によって起きた出血は、くも膜下腔に広がり、既に破損された薄い軟膜やくも膜の外に大部分は出血して硬膜下血腫を形成します。そのため、脳挫傷や硬膜下血腫を発症するような場合は、くも膜下出血が起こっていると考えられます。これにより、脳表の動脈が攣縮を起こす場合があります。軽症であれば手術を行うことはほとんどなく、対処的に鎮痛剤、抗けいれん薬などを使用し、経過を観察します。重症の場合は適切な病院を紹介致します。
頭蓋骨骨折
頭蓋骨の骨折の形状により、線状骨折(単なるひびが入った状態)、陥没骨折(一部が脳の方向へ落ち込んだ状態)、粉砕骨折(一部がくだけてしまう場合)、縫合離開などがあります。頭の表面で起こった場合は、重症とならない場合もありますが、頭蓋底骨折(骨折が脳の底面近くに起こった状態)の場合は、鼻や耳から出血したり、視神経等に異常が生じる場合があります。
治療としては、骨折だけの場合は保存的に経過を診ていきます。折れた骨が脳を傷つけている場合は、手術をして折れた部分を整復します。
脳挫傷
脳挫傷からの出血と、脳浮腫を起こすことがあるため、激しい頭痛、嘔吐、意識障害が現れます。また、片麻痺、半身の感覚障害、言語障害、けいれん発作などが現れることもあります。治療は、点滴治療、安静で経過を診ます。多量の血腫ができた場合や、脳浮腫による圧迫で脳ヘルニアの状態にまで進行すると、生命の危険がありますので、手術による減圧が必要な場合があります。そのような重症の場合は適切な病院を紹介致します。
急性硬膜下血種
急性硬膜下血腫発生の原因のほとんどが頭部外傷によるものです。多くは受傷した側の反対側に血腫が起こります。受傷により脳挫傷が起こり、血管が損傷されて出血し、頭蓋骨の下の硬膜に溜まることです。高齢者の場合は比較的軽度の外傷でも生じることがあります。また抗血栓薬を服用されている方など外傷とは関係なく生じることもあります。症状としては、受傷してすぐに意識障害を伴うことが多く、頭痛、めまい、嘔気・嘔吐、運動麻痺、感覚障害、失語症を起こします。
血腫の量が多く、脳への圧迫が強い場合は、開頭減圧術、血腫除去術などの治療を行います。重症の場合は適切な病院を紹介致します。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は、頭部外傷直後には、頭部 CT でも異常が認められなかった場合でも、1~2ヶ月後になって、頭蓋骨の下の硬膜に血液が徐々に溜まり、症状が出現します。
症状は、頭痛や吐き気、手足の痺れ、言葉が出にくい、物忘れがひどくなった、疲れやすい、尿を漏らすなど様々な症状が出現します。高齢者や抗血小栓薬を服用されている方は、注意が必要です。治療法は、穿頭ドレナージ術を施行します。頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を入れた上で血腫を洗い流します。この手術は局所麻酔で行い、比較的高齢の方でも手術は可能です。重症の場合は適切な病院を紹介致します。
頭を打った時には、脳にいろいろな変化が起こります。とくに頭蓋骨の内側に出血が起こると生命に危険をおよぼすことがあるので注意が必要です。頭蓋内出血の症状は、頭を打った後すぐ起こることも、数時間、1~2日、ときには数日たってから起こることもあります。そのため、頭を打った場合は、その時は何も症状がなくても、数日後に症状が出る場合もあるため、医療機関に受診することが必要です。